もちマイとうるちマイ
(以下、あさ読書の成果、おもしろいとこの要約でございます )
その違い。「もちになるこめ」「普通に食べるこめ」という定義/区分は、和人視点で皮相となる。東南アジアの焼きはた地域のひとびとにとって、日常に食べるものが「もちマイ」ゆえ。同時に「うるちマイ」は「硬くて旨くないこめ」となる。文化基点の区別をここではわきに置こう。
科学基点の別としてそれほど難しくないのは、もちマイは粘りが強く、うるちマイは比して粘らぬこと。これを掘り下げると、つぶにある「澱粉の性質」に帰着できる。こめの澱粉を構成するのは、アミロースとアミロペクチンで、前者は糖の分子が螺旋状に繋がりコイル状構造をしているため、切れやすく「ぱさぱさした感触」の澱粉をつくる(対して後者は糖分子が葡萄ふさのような複雑構造をとる)。結論をいえば、米種の別はこれら 2種の澱粉の割りあいの違いに由来するということ。うるちマイはアミロース含量15~30%、もちマイは同含量 0%である。これらの澱粉の差は、触感のみならず消化にも反映されていて、もちマイは「はら持ちがよい」し、うるちマイは「消化が早い」ことになる。澱粉が糖へと分解されるとき、複雑構造のアミロペクチンはアミロースに比べて進行が遅い。結果、血液中に糖分量の上昇も遅くなり、血糖値の反映である「満腹/空腹感」もゆっくりなだらかに進んでゆく。アミロペクチンが多いのはもちマイである。
ちなみに、強いひかりに透かして半透明(うるち)/不透明(もち)という方法でも確かめられる。さらに化学実験的には、こめつぶを半分に割り沃素沃化カリウム溶液に漬ける手法も。うるちマイは、断面があおむらさきいろに見える(もちマイはそのまま染まったいろ)。
もう 1つの科学基点の区別は、遺伝に見えるもの。もち=うるちを交配すると(種子は)うるちになり、それを蒔いてできた(種子)「雑種第 1世代」はもち=うるち(1:3)で出てくる。うるちが「顕性」。ちなみに、もちマイはうるちマイの「変種」ないしは「変残(いわゆる「進化」)」したものである。うるちの「アミロースを作る遺伝子が壊れ」たものが、もち。DNA配列において、2番めの本体部(エクソン)先頭に23個の塩基が重複してしまっており、3つを1単位とするアミノ酸のそれ以降の「記号」配列が「アミロースを作りなさい」と全く読めなくなってしまったらしい。
