往復書簡

2024年07月14日

て、ほどじゃないが、過去に「氷晶書房」事業で教科書を買って頂いたかたとのやりとりを掲載します(若干いい回しなど、てを入れています)

某氏:私がこのような消費行動をとるのか…付記しておきます。現在、「世界史」「日本史」は高校の教科としてカリキュラムが大幅改変している最中(過渡期)です。(「世界史B」「日本史B」は消滅します。)この節目に、ここ30年ほどの「世界史B」と「日本史B」の微妙な時代ごとの変化と、それと相関関係が強かろうセンター試験、国公立大の入試との関係(難関私大は教科書レベルを逸脱するので)をあらためて丹念に調べて総括したいということです。新たな「世界史探究」「日本史探究」の変遷と大学の試験との関係がどう推移するのかといったことにも役立つかな? 同一の出版社の教科書の比較が望ましいのです。無論、私はプロ(高校教師、予備校講師ではありません(そうだったら勤め先に研究用に保管してありますね。))また、教科書の蒐集家(?)や物品への投資家(将来の転売目的)(?!)でもありません。ただの素人の歴史愛好家(歴史ヲタクか?)です。

小生:在学時にはセミナーで教科書比較(出版社別)も行いました。おやの世界史教科書などを覗いてみると、歴史叙述の変化なども垣間みえて面白いものがあります。自身が参考に集めていたものや、恩師(かつて文科省審議会に世界史関係で参加)からもらった世界史副教材(図録資料集)などを、空間整理のため販売させてもらっています。おかげさまで、20年程度の時間的価値も付加され(きちんと段ボールに入れていただけなのですが)大学や高校の先生(と思われる方)を中心に、教科書と資料集は書房で 1番の売り上げを誇っています。そのようにご活用いただけるなら、死蔵状態から晴れてやくだてる機会を得られて教科書も嬉しいのではないかなと思います。

わたしは、高校生のときに世界史に魅せられ、「受験勉強しないで世界史の勉強に没入」していました(笑) 教壇に立ったときは、生徒に料理に絡んだ土器の重要性(レヴィストロース区分の「なま」でも「焼く」でも食せない「腐らない」作物を「煮る」)を学んでもらったり、スペイン人とアステカ帝国の状況差から「衝突の結果」を考えてもらったりしました。いまも、ぢもとの fm 放送で「世界史学房」という番組で喋っています。文化圏や地域世界とまではいかなくても、「さかいを跨いで」移動する、特に商業者に興味を持っています。

某氏: 私も高校時代に教科書比較(出版社別で、特に最大手の「山川」との比較。)をしました。当時、新聞の社説の比較とその要約というやはり受験勉強との直接関係ないことから離れ、そろそろ、受験体制だなって時に、悪いことに気づいてしまいました。(私の高校の図書館が「余計」な物をそろえているので。)当時、衝撃だったのは、山川と東書は中世ヨーロッパのはじまりを明らかに違う史観で書いていた点でした。(前者は西ローマ帝国の滅亡で古代を終わりとし、後者はビザンツ帝国のユスティニアヌス朝ぐらいまでは古代末期として大きな章の終わりとしていた。東書の欄外のコラムに「ムハンマドなくしてシャルルマーニュなし」ってピレンネ・テーゼがあって、私の質問に先生が解説して下さった。彼は「他の教科は大丈夫かって」心配して下さったのに「浪人上等」ってかんじでした。現役志向がかつてなく強い現在と当時は違いました。そういえばその教科書はウォーラステインの世界システム論を意識して書かれていると教わった時も、じっくり勉強してから、大学にいくべきだと、むしろ高3の受験対策をおざなりにし、他教科まで深掘り路線になっていきました。

<<<文化圏や地域世界とまではいかなくても、「さかいを跨いで」移動する、特に商業者に興味を持っています。

僕にどれだけ理解できているか不明ですが多分はじめて出会う着眼点ですね。

例えば、ダイナミックな交易(広範囲、そして時代がくだり航海技術が発達するとより広範囲、物量も多い)が熟成されてくると地域で分業体制ができますね。それに従って物流も効率化を訴求し、移動距離と運ぶ物量の多寡、そして運搬する地域によって分業が進むと考えるのが自然ですが、私は素人ですのでなんの史料的裏付けはありません。(ある地域ではより大きな組織が運輸王として物流の川上から川下まで牛耳っていないというには丁寧さがまるでないですが、着目点は商業統括組織ではなく商人ですよね?)例えば、江戸時代の日本では国際分業体制からは離脱しましたが(日本だけではなく周辺国もですが)、かわりに国内経済にダイナミックな交易が熟成し、穀物消費地、集積地、生産地に経済は穀物の面では分業していきました。しかし、農村と都市において、農民の生活がどう変化していったか、都市の商人(豪商)が政治や文化にどう関わったかはいろいろ語られますが(都市の下級武士や町人も語られますね)、廻船の船乗りは普段は家に帰ると町人なんですよね? では、現在の一級河川などは当時は物流の大動脈でしたが、そこで商業活動に従事していた人って、その地域の城下の町人なのか、農民が兼業していたのか、これだけ各地で川下りとして観光化されているのにイメージがわきませんね(不勉強で恥ずかしい。)ましてや川が物流に使ない地域の穀物の運搬の担い手は? 農民が年貢を納めるのと同時に運ばされてそうなイメージもあるが、山間部に塩を売っていた人達は商人っぽい。彼らは商業専業なのか?ただ、<「境を跨いで」移動する、特に商業者>とは日本だと行商人をさしているのかな?

では、東ヨーロッパのように国際分業体制で穀物輸出国になった地域の大河川の運輸を担っていたのって? 河川まで運搬する陸運業者って存在したのかな?

まぁ、この辺にしておくか。夢想だけならタダですね。しかし、研究となると骨が折れそうですが、やりがいもおありなんでしょうね。

<文化圏や地域世界とまではいかなくても>というのは、たとえば、神聖ローマ帝国内の領邦を跨いで活動する商人が活発に活動していたとするなら(何の史料的裏付けなしですが)そういう商業者は西ヨーロッパ世界で広域に活動していない。各領邦に政治的に分裂していったドイツの文化的なまとまりは、時代がくだるにつれ商業活動が活性化したのであれば、むしろ「彼ら」のような、ダイナミックな交易と無関係ではないが、はるかに小さい活動範囲で村落共同体をネットワークとしてつないでいた・・・・・・・

長い呟き、大変、御迷惑をおかけしました。

小生: 北海道の地は、朝晩は涼しく心地よいひが訪れています。楽しい「呟き」ありがとうございました。

近世東欧の河川商路について。ちょっとまえの放送で菊池さんてかたの論文「ハンブルクの陸上貿易1630~1806年」を取り上げました。おもしろかったです。自分のすきなたぐいの論文が『社会経済史学』に多いのですが、これらは pdf ダウンロードできるので便利でした。修士論文でヴァイキングについて取り上げ(ただ消化不良だったので課題として残っているのですが)おお雑把に言えば、彼らは一定期間に「故郷外にでかせぎにでる(ヴィーキャする)人々」で、交易-略奪はあいてによって変わってくる、つまりは「海賊」とか「商人」と職業的に断定しえない存在だった点を思い出しました。前近代なので「未分業社会」ならではありようだったわけです。江戸時代の河川ぞい山間部に関する取り引き関係と担いてなども楽しそうですね。

「さかいを跨ぐ」のは視点によりますが、ヴァイキングは西欧「キリスト教圏」やおもしろいところで中央アジア(イスラーム圏)のハザル-ハン王権にまでたびしているので(あ、アメリカ大陸にも到達していますが)、異文化=異郷にもまれていたわけですね。しかし、江戸幕府があったとはいえ、列島社会も「平坦度が低い」地勢からすると中華大陸なんかよりは社会制度や文化が一円普遍的には広まらないと思うので、やまに入る(やまを下りる)ひとびとが遠くの「かれら」と交渉するのも、微細ですが「さかいを跨ぐ」要素もあったのかなとも思います。

高校時代の先生がウォーラーステインに言及していたのは、多分年代から推測するに、かなり進取の精神つよかったのではないでしょうか? 現代世界について、かれのシステム論は分かりやすい視座を提供してくれますよね。大学時代にはまだ難しくて、岩波のきいろい本を熟読できませんでした。ちゃんと読もうかな(笑) 2000年代の世界史教科書なら、訳者の川北稔さんが関わっていた帝国書院の世界史が世界システム論を反映しているかもしれません。ちなみに、東京でもと高校教師だった恩師は、東京書籍の世界史教科書執筆に加わっていました。同じく高校教師仲間に、日本史の網野善彦さんがおられたようです。

商業者については、主体はだれでもよいのですが、近世あたりの王室程度ならまだしも近代以降の大企業とかになると、知力の限界にぶつかってしまい大変なので前近代あたりのこじんまりしたひとびとの方が好きですね。アイヌもそうですが、素朴な方が向いてます。

世界史は日本史以上に原文(古文書)にアクセスする機会が厳しいので(僕はアクセスしたところでそれを読む能力も缼如していますが)がんばって英語書籍=論文、プラスアルファで研究対象の現地語を勉強したいと思いつつもひぜにかせぎの現実を言いわけに進んでいません。むかしはスウェーデン留学なんかも夢想しました(笑)

こちらには、ほとんどこういう話題をできるかたがいないので、いろいろとお聴きでき、そこから脳細胞の記憶を想い起こせました。ありがとうございます。こちらも、長くなりました。

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