いちばについて

2024年12月14日

あさ読書で、うえに関する素敵な文章に邂逅したので、記します。短くも、正解めじろ押し!って感じ(笑  森本哲郎『私のニジェール探検行』(中央公論社、1982)。

「市とは欲望の交換場である。人間の欲求というものは、生活環境によってまったくちがったものになる。だからこそ、市には遠方からの人間が集まるのだ。遠くからやってきて、たがいにちがう欲求を交換し合うわけである。市とは人間によって異なる価値の体系が交差する場所だといってもいい。貨幣、資本、流通、しだいに巨大化し、抽象化され、組織化され、管理化されていった世界経済の原初の風景が、こうした市にはっきりと見られる。…つまり、交易というのは、ある意味で喜劇なのである。価値観がたがいに距たれば距たるほど、交易は活発になるからだ。私たちは塩と金との交換におどろくが、西アフリカの黒人にとっては、ナイフの柄なんぞにするためにわざわざ船を仕立てて象牙を買いにくる白人のほうが、もっと驚嘆に値するのである。いったい、どちらの価値観のほうが正常なのだろうか、と私は考えた。考えれば考えるほど、黒人の抱く価値観のほうが人間的のように思えてくる。だって、そうではないか。彼らが考えるように、ナイフの柄や櫛などは木ぎれで充分用が足りるのである。だが、金は塩の役目をしない。金はただ光っているだけであるから。」(pp.147-149)

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