『黒牢城』
2025年05月31日
戦国期、荒木村重を主役とした小説。とてもおもしろかったです。食いいる様に読みました。これ、実はミステリーで、推理作家のかた(米澤穂信さん)がて掛けた異色で、しかし時代を感じさせることば遣いが素敵でした。
その「帯」の煽り文について、文句を垂れます(笑)
「四面楚歌の有岡城で、二人の推理が歴史を動かす」 ➡ まったく動かさぬ。「全米がなみだした」的な典型誇大広告。ただ、(一般に想定される)戦国時代の駆動的推移、ではなく「荒木家中や周囲の庶人の歴史」ってことなら、確かに動かしている。
「辻真先(ミステリ作家)…牢獄の智将と謀将の対峙が、武門の意気地を腑分けする。これはミステリの新天地だ。」 ➡ 全般、その通り。ただし、「武門意気地の解剖」が主題ではないので、(感じ取られた魅力の焦点という意味では頷けるも)少しく偏っている。
「本郷和人(歴史研究者)…骨太な合戦描写とちりばめられた疑惑。複雑に絡み合う「なぜ」が物語り末尾で爆発する。」 ➡ 後段、その通りで、わっ!とここ地よい上質推理小説。ただ、合戦の情景はほとんどないので「骨太」もなにもない。
個人評は編集者(出版社)により切り取られているはずなので、そんなに責任は重くないが…。兎も角、わたしは安易な/実態と遊離したことば、「ことばのためのことば」を好みません。というより、憎む。お喋り人間も、大量のことばすべてを堅実一致でくちに乗せるのは非常な力量を要する(つまり困難である)ことから、嫌悪します。評論家も嫌悪する。硬い意味で、非生産的言辞を弄んでいるゆえ。
歴史するものの自戒でもありやす。自身のくちべたへの正当化でもありやす。